乾燥DNAをアメリカに送る その2

前回の続きです。

 

・適切な箱に適切な緩衝材とともに詰める

公式サイトを見ると緩衝材はプチプチや紙などが許されているようでした。実験室に置いてあった緩衝材として使われていた紙を使うことにしました。くしゃくしゃの紙とくしゃくしゃの紙の間にシールとカバーがされた乾燥DNA入りプレートが挟まっている状態にして、実験室においてあった使われていない片手サイズの段ボール箱に箱詰めしました。ガムテープで箱に封をしました。

 

・内容物がDNAだとわかるようにするために、「DNA(non-hazardous, non-ragulated, non-infectious, for research purpose only)」と箱に書く

段ボールの側面に書きましたが、郵送することを考えるとどうせ伝票が貼られることになるのでそちらに書かないと意味がないのではということになりました。

 

・郵送するときには郵送会社とtracking number(追跡番号)をメモしておいて、どんなプラスミドを提出するかをwebフォームに書き入れるときにそれらも記入する

まずどうやって郵送するんだという話になりました。今まで乾燥DNAを郵送した経験がなかったのでどのようなサービスを利用すればいいのか全く分かりませんでした。

 

とりあえず「国際便 郵便局」や「国際小包 郵便局」で検索したところそれっぽいページがヒットしました。「DNA 郵便局 アメリカ」で前例が出てくるかと思ったのですがいい感じのやつがヒットしませんでした(それがこのブログを書こうと思ったきっかけの一つです)。乾燥DNAの郵送についての法律などを全然知らなかったのですが、「わざわざ箱にいろいろ書かせたということはそれを書けば普通に送れるのではないか」「このサイトにダメって書いてないしダメじゃないならいけるのでは」「国内はともかく国際輸送はEMSでできるらしく、iGEMの運送会社一覧にEMSが載っているのでいけるのではないか」など考えて駒場郵便局から送ってみることにしました。(ちなみに生物の郵送は原則禁止されているのですが、みつばち、水ひる、蚕、生物医学の研究のために用いられるショウジョウバエ科のハエであって公認の施設の間で交換されるものは条件次第でアメリカにEMSで郵送できるらしいです。国際郵便約款第10条第1項(7)(リンク先pdf))

郵便局に行き、窓口にて「EMSの国際小包でこの箱送りたいんですけど」と言うところまではよかったのですが、箱に何が入っているか聞かれ、「乾燥したDNAです」「何ですか?」「DNAです」「それは検体みたいなものですか?」「みたいなものといえばそうだし違うといえば違います」「細胞とかですか?」「生きてはいないです。物です。ケースに入っています」などの問答を行いました。郵便局員も乾燥DNAを送ることに慣れていないようで、お互い少し困っていましたが、先ほどの郵送禁止品の条件に該当しないのでOKということになりました。

伝票とInvoiceという書類に必要事項を記入し、tracking numberを控えました。通常のエアメールと同様に記入すればよく、物品名の項目に「DNA(non-hazardous, non-regulated, non-infectious, for research purpose only)」と書きました。Invoiceも同様でした。

ここで一つ問題が発生しました。伝票とInvoiceに送るものの価格を書く欄がありました。荷物を紛失した時の損害賠償などで使われる項目らしいです。自分たちで作ったプラスミドにどうやって値段をつけていいかわからず、ここまで来てこのまま普通に郵便局から郵送していいのか不安になったので、一度実験室に戻ってサポートしていただいている研究室の方やチームのOBにどうすればいいか聞いてみることにしました。

 2015年も同様に乾燥DNAを郵送する必要があり、その時はFedexを利用したとのことでした。しかし、この時点で時刻は15:45ぐらいになっており、Fedexと郵便局の集荷時間である17:00まであと一時間ほどと迫っていました。パーツ提出条件は10/21に発送することであり、この日は10/21であったため、何としても17:00までに提出する必要があり、かなり焦りました。

Fedexのシステムを検索したりしているうちにどんどん時間は過ぎていき、気が付けば16:20ぐらいになっていました。集荷に間に合わせなければいけなかったので、とりあえず郵便局で送ることにして、もし何か不都合があったら急いで半蔵門にあるFedexに向かおうということになりました。

そのまま郵便局に急いで戻り価格のところにとりあえず100円と記入して提出したところDNA入りの箱は無事局員に引き取られました。俺の三か月、100円。

ボール紙の大きな封筒のようなものに箱を入れるように指示がありました。この封筒は無料でもらえました。Invoiceがどうなったかは見逃しましたが、伝票は封筒の外側に貼られていました。

送ったものが軽くて小さいこともあり、郵送にかかる料金は2000円でした。EMSはほかのサービスより速く到着する代わりに高価であり、発送さえしてしまえるならば別の安いサービスを使ってもよかったのですが、iGEM公式がリストアップしている運送会社がほかになかったので念のためEMSで送ることにしました。

 

荷物がDNAであるにも関わらず特に詳しい書類を記入するわけでもなくそのまま滑らかに引き取られてしまったので差し戻されるのではないかと不安でしたが、tracking numberを利用して追跡したところ現地時間で10/25に無事iGEM本部に到着したことが確認できました。下の画像はEMSの追跡サービスの記録です。

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PCRの機械で温めた時に乾燥状態で熱せられてもプラスミドは無事なのか、不都合なコンタミなどはしていないのか、空港の検査のX線を浴びてもプラスミドは無事なのか、ということはまだわかりません。提出したプラスミドの配列が読まれるのはおそらく来年になってからなので結果がわかったら追記したいと思います。

 

結論:通常の国際小包と同じ手続きをすれば安全な乾燥プラスミドを郵便局からアメリカに郵送することができます。 

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