DNAワークの流れ

実験操作や概念の説明、一般編です。

 

今回は「DNAワーク」と呼ばれる(我々が呼んでいた)(正式な名称としては「DNAクローニング」が一番当てはまると思います)遺伝子組み換え操作の大枠や意義を説明していきたいと思います。

 

 

Standard Assenblyでは、あるプラスミド上の遺伝子の前か後ろに別のプラスミド上の遺伝子を繋げて新しいプラスミドを作る、ということを行います。これは前回の記事で話した通りです。「DNAワーク」ではこのStandard Assemblyを繰り返して目的遺伝子を含んだプラスミドを作り出すことが目標です(もちろんこの方法で作り出せるのは既にプラスミド上に存在する遺伝子を組み合わせることで作ることができる遺伝子だけで、全く新しいものはこの方法では作ることはできません)。

プラスミド編集のためにはそのプラスミドがある程度の量あることが必要であり、一連の実験操作の中ではプラスミドを増やす行為が必須です。プラスミドを増やすためにはそのプラスミドが入った大腸菌の増殖を利用します。プラスミドを増やすためにはそのプラスミドを大腸菌に導入する必要があるということです。

よってDNAワークでは、プラスミドを編集、できたプラスミドの大腸菌への導入、大腸菌からプラスミドを抽出、という3つのことを繰り返すことになります。

 

DNAワークの流れは次のようになっています。

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左上から反時計回りに簡単な解説をしていきます。詳しい解説は次回以降の記事で行います。

 

プラスミドAを大腸菌に導入→固体培地で培養→(PCRでチェック)→コロニーを選ぶ

この一連の操作はプラスミドAが導入された大腸菌を作り出すためのものです。前の記事でも書いた通り、大腸菌にプラスミドを導入する操作を行ったところで、すべての大腸菌にプラスミドを導入することができるわけではありません。プラスミドが入った大腸菌だけを選択的に培養し、状況によっては入っているプラスミドが目的のものなのかチェックし、目的の大腸菌だけを選択する必要があります。抗生物質入りの固体培地とPCRによってこれを実現します。

 

液体培地で培養→プラスミドを抽出

この操作は大腸菌の増殖を利用してプラスミドを増やすためのものです。プラスミドAを持っていた大腸菌が分裂すると、分裂してできたそれぞれの大腸菌にプラスミドAが入っていることから、全体としてプラスミドAの量が増えることになります。大腸菌が十分増えたら大腸菌の培養液からプラスミドを抽出します。

 

制限酵素で切断→ゲル電気泳動→ゲル抽出

この操作は2つのプラスミドを繋げる準備としての切断などを行うためのものです。制限酵素でプラスミドを切断することが2つのプラスミドを繋げる上で重要なことではあるのですが、電気泳動やゲル抽出も基本的には欠かせません。プラスミドを切断すると、目的遺伝子を含んだ必要な断片とそうでない側の不必要な断片ができてしまうことはわかるとおもいます。また、制限酵素によってプラスミド溶液中のすべてのプラスミドが切れるとも限りません。このような不必要なものを含んだ溶液から目的とするDNA断片を取り出すために電気泳動とゲル抽出を行います。

 

A切ったやつとB切ったやつ繋げる

図中では省略されていますが、プラスミドA上の遺伝子と繋げたい遺伝子を持ったプラスミドBについても今までの操作と同様の操作を行います。二つのプラスミドに対する操作で根本的に違う部分は切断に使う制限酵素の種類だけです。プラスミドAとBのどちらかはvector、どちらかはinsertになるように制限酵素を選んで切断する必要があります。適切に切断されたDNA断片をつなぎ合わせると、目的となる遺伝子を持ったプラスミドABが出来上がります。

 

 

以上がDNAワーク1サイクルの簡単な説明です。出来上がったプラスミドABにさらにプラスミドCの遺伝子をつなぎ合わせる必要があるなら、それらのプラスミドを使って今までの操作をもう1サイクル行います。このように繰り返すことで最終目的のプラスミドをつくることができます。

 

実際にDNAワークを1サイクル行うためにかかる時間は培養時間なども含めて大体2日です(急ぐと1.5日とかで終わることもあります)。次回以降の記事ではそれぞれの操作の具体的方法やより詳しいところの説明をしていきたいと思います。

 

 

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